はじめに
現代の企業環境において、SaaSアプリケーションの利用は不可避であり、その全容を把握することは堅牢なセキュリティ体制を構築する上で喫緊の課題です。把握をしていないと、シャドーIT、分散的な導入、サードパーティとの連携(OAuth認証/SSO)といった要因により、潜在的なセキュリティリスクを増大させます。従業員の都度社内申請やエクセルによるSaaS管理など、従来の典型的な手法では、これらの隠れたリスクを網羅的に特定することは困難であり、包括的なSaaSベンダーデータベースによる管理が不可欠となります。
SaaSデータベースの必要性:
継続的に更新されるSaaSデータベースは、利用されているアプリケーションを特定するのみならず、その概要、安全性、アクセスするデータに関する詳細な情報を提供します。この詳細な情報は、正確なリスク評価と、セキュリティ戦略の策定を可能にする基盤となります。
SaaS可視化の重要性:
SaaSの可視化は、組織内で利用されている全てのSaaSアプリケーション(承認済みおよび未承認のものを含む)を特定し、カタログ化するプロセスです。平均的な企業におけるSaaS利用数は増加の一途を辿っており、セキュリティ部門がその全容を正確に把握していない場合、データ漏洩、コンプライアンス違反、過剰な権限付与されたサードパーティアクセス、不適切な設定構成、ライセンス管理の不備といったリスクが顕在化します。
拡大するSaaS攻撃対象領域と日産自動車の事例:
SaaSへの支出は世界的に増加しており、企業のあらゆる部門でその活用が進んでいます。その結果、クラウドベースのアプリケーションが分散化し、セキュリティ部門の監視範囲外で運用される事例が増加しています。2023年に発生した日産自動車(北米)におけるデータ侵害事案は、第三者サービスプロバイダーによる顧客データの不適切なGitHubリポジトリへの保存が原因であり、未監査かつ監視されていないSaaS接続の潜在的な危険性を示唆しています。包括的なSaaS検出機能が適切に実装されていれば、このような事態は回避できた可能性があります。SaaSを標的としたサイバー攻撃は増加傾向にあり、認証情報の窃取を伴う事例が多数報告されています。
包括的なSaaSデータベースがセキュリティ基盤となる理由:
SaaSアプリケーションの存在を認識するのみならず、その機能、アクセス権限、および他のサービスとの連携状況を理解することが不可欠です。包括的なSaaSデータベースは、アプリケーションの目的、安全性、コンプライアンス認証、利用ユーザー、脅威インテリジェンス(SaaSプロバイダーのセキュリティインシデント)といった多岐にわたるメタデータを提供します。これにより、セキュリティ部門は表面的な情報に留まらず、より深い可視性に基づいたリスク管理とインシデント対応が可能となります。
静的データベースと動的データベース:
多くの検出ソリューションは、静的に構築されたアプリケーションカタログに依存していますが、これらのカタログは時間経過とともに陳腐化し、新たなアプリケーションを把握できない可能性があります。それとは対照的に、Wing Securityのような動的なSaaSベンダーデータベースは、継続的に情報が更新され、広範なアプリケーションに関するメタデータを含んでいます。この動的なモデルにより、未知のアプリケーションの正確な識別、リアルタイムなリスク評価、および自動的な分類が可能となり、検出プロセスが継続的なものとなります。
Wing Securityの活用とSaaSリスク評価:
Wing Securityは、業界屈指の包括的なSaaSデータベースを検出および評価プロセス全体に統合することで、従来のSaaS検出ツールを凌駕します。多層的な検出メカニズム、リアルタイムなリスク分類、および自動化されたワークフローを提供し、あらゆる侵入経路からの検出、詳細なコンテキストの提供、リアルタイムな監視と行動追跡、コンプライアンスおよびガバナンスとの整合性を強化します。
SaaSリスク評価におけるベストプラクティス:
継続的なSaaS検出の確立、コンテキストに基づいたリスク評価、ユーザーアクセスおよび権限の経時的な監視、ポリシー適用の自動化、コンプライアンスフレームワークとの整合性確保、動的なSaaSベンダーデータベースを組み込んだツールの活用が重要です。
結論:
SaaSの無秩序な拡大は避けられない傾向にありますが、セキュリティ上の盲点は適切な対策によって排除可能です。動的なSaaSデータベースは、組織のSaaS利用状況を可視化するための基盤となり、正確な検出、状況に応じたリスク評価、および情報に基づいた意思決定を支援します。効果的なリスク管理戦略は、網羅的な検出から始まり、その基盤は堅牢なSaaSベンダーデータベースによって支えられます。